話題のニュースアプリ、NewsPicks編集長の佐々木紀彦氏が伝える、時代の変化と、いま身に付けたい資質について書かれたのが、日本3.0です。
未来の経済動向、社会動向について、何冊か本を読んだ方にはもちろんお勧め。少し深く、世の中を取り巻く変化について掘り下げたい方にも手に取って頂きたい一冊です。
日本3.0 – 2020年の人生戦略
タイトルの、日本3.0はパソコンのOSのようなイメージです。70年ごとのサイクルで、おおきな変化が訪れて、”アップデート”が起きています。
・2.0 (1945-2015): 経済成長期。敗戦後からの経済成長の時代。
・3.0 (2015-2085): これからについて。本書のテーマ。
変化が起きる時には、価値観も変わってくる。これを佐々木氏は、「ガラガラポン革命」と読んでいます。
根本から価値観が変わる、日本3.0時代が来る。日本よ挑戦に身を投げろ!…という強いメッセージが込められています。
これからの日本がどのように変わるのか?ということについて、国家、経済、働き方という切り口で丁寧に解説されています。(そこの部分も大変面白いのですが割愛します…!)
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技術革新、価値観の変化が急激に起きる、いわば激動な時代。その中で、本書が必要なものとして挙げていることは2点あります。
日本3.0と教養
ワールドクラスの教養
著者の佐々木氏は、スタンフォードに留学経験があります。そこでのエピソードに胸を打たれたので紹介をします。
当時、全く授業についていけなかった佐々木氏は、それは単純に自分の英語力だと思ったそうです。猛勉強を経て英語力がある程度身につけた時、他の学生との差は英語力ではなかったと気づきました。それは、彼らに裏付けられた、圧倒的な教養の量です。
ハーバード大の一般教養プログラムは以下の8領域です。
・世界の中の米国
・世界の社会
・物理科学
・生命科学
・倫理的推論
・経験的・数学的推論
・文化と信仰
– Learn to Think Critically, Act Ethically, and Engage (出所: ハーバード大)
また、スタンフォード大生が読む教養書50冊は以下の通りです。
『歴史』 トゥキディデス | 『旧約聖書』 |
『歴史』 ヘロドトス | 『新約聖書』 |
『饗宴』 プラトン | 『オデュッセイア』 ホメロス |
『ソクラテスの弁明』 プラトン | 『イリアス』 ホメロス |
『国家』 プラトン | 『オイディプス王』 ソフォクレス |
『政治学』 アリストテレス | 『神曲』 ダンテ |
『弁論家について』 キケロ | 『ユートピア』 トーマス・モア |
『君主論』 マキャベリ | 『ハムレット』 シェイクスピア |
『統治二論』 ロック | 『リア王』 シェークスピア |
『リヴァイアサン』 ホッブズ | 『ファウスト』 ゲーテ |
『省察』 デカルト | 『エセー』 モンテーニュ |
『国富論』 アダム・スミス | 『怒りの葡萄』 スタインベック |
『自由論』 見る | 『荒地』 T・S・エリオット |
『啓蒙とは何か/永遠平和のために』 カント | 『闇の奥』 コンラッド |
『社会契約論』 ルソー | 『高慢と偏見』 オースティン |
『人性論』 ヒューム | 『フランケンシュタイン』 シェリー夫人 |
『道徳の系譜学』 ニーチェ | 『 1984年』 オーウェル |
『人口論』 マルサス | 『ウォールデン』 ソロー |
『ザ・フェデラリスト』 ジェームズ・マディソン他 | 『審判』 カフカ |
『アメリカの民主主義』 トクビル | 『ガリバー旅行記』 スウィフト |
『大転換』 カール・ボラニー | 『タンチュフ』 モリエール |
『資本主義と自由』 ミルトン・フリードマン | 『ゴリオ爺さん』 バルザック |
『個人主義と経済秩序』 ハイエク | 『異邦人』 カミュ |
『雇用、利子および貨幣の一般理論』 ケインズ | 『種の起源』 ダーウィン |
『資本主義、社会主義、民主主義』 シュンベーター | 『ドン・キホーテ』 セルバンテス |
これらは、スタンフォード生の課題図書の一部です。これらを読破までとはいかなくても、大半を読みこなして初めて、西洋型教養人の資格を手に入れることが出来るのです。
これだけのバックグラウンドがある学生と、ない学生。当然、授業の中のディスカッション、発言などのパティシペーションの質は差として明確に表れます。
佐々木氏は、米国一流大は教養課程を重視していることを身を以て体感しました。そして、今こそ教養を得ることが時代を担う若者に必要だと呼びかけています。
幕末の志士たちも、実は教養を持っている人が多くいました。まさに、ワールドクラスの教養人だったのです。例えば、日本型教養人のモデルの一人は福沢諭吉です。彼は単なる西洋かぶれではありません。そのバックボーンには漢学の素養があります。
漢学をベースに、蘭学を学び、英語を学び、日本的、西洋的な教養を統合していったのです。
こうすることで、ただの米国の猿真似にならず、日本の伝統に拘泥するでもなく、両者を高次元で融合させる。日本人にしか身につけられない教養を高レベルで身につけることが出来ます。
日本3.0とリーダー
リーダーシップが欠けている日本
日本には、本当の意味でのリーダーがいないのではないか?そう警鐘を鳴らしています。
マネージャーとリーダーは違う。リーダーは、マネジメントのイメージではなく、自ら動いていく存在です。
リーダーの資質は、体力・ワールドクラスの教養・コスモジャポニズム などが挙げられています。
日本に特に足りていないのは、決断型のリーダーです。足りない材料・情報の中で、最善の結論を立てて決断をする。そんな力強いリーダーが、これからの日本には不可欠です。
コスモジャポニズム
リーダー最後の条件として、「コスモジャポニズム」というフレーズが挙げられています。
これは、コスモポリタニズムとジャポニズムを組み合わせた造語です。一言でいうと、日本を愛し、日本を土台にして、世界にも貢献するということです。
日本を愛するというナショナリズムと、コスモポリタニズムは矛盾せず共存出来る。
家族、地域、会社、日本という足元のアイデンティティをしっかり確立し、敬い、それを世界と対立するものではなく、世界に資するものとしてつなげていく。オープンな保守主義のようなものです。これを持つことで、世界に貢献しようという意欲に繋がります。
例として挙げられているのが、サッカーの本田圭佑選手と、柔道全日本男子の井上康生監督です。
彼らは、日の丸を背負い、日本のためにプレーするだけでなく、選手の枠を超えて、世界を舞台に果敢に行動をしていっています。
本田選手は、オーストリアのサッカークラブのオーナーになったり、国連の教育事業に協力したり、ファンドを立ち上げてスタートアップに投資したりと、発想がコスモポリタンです。
彼らに共通して言えるのが、日本を背負って、世界に貢献しているところです。
これから時代を担う人が、絶対にやってはいけないこと
これからの世代を担うのは30代だと述べています。そんな30代の人に対して、絶対にやってはいけないことが書かれています。それは、「親の言うことを聞くな!」ということです。
親は、良かれと思って様々なアドバイスをしてくれます。ですがそれは、日本2.0の時代を生きた親の言うことです。ライフイベントなど、重要な出来事については、特に客観的に判断した方がいいです。
親の言うことを良い意味で聞かず、挑戦をする。それが、次の時代を切り開くために必要なファーストステップなのですね。
チャレンジすることを恐れず、リスクをとって、時代を担っていこう。そんな熱い思いにあふれた一冊です!
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