僕は君たちに武器を配りたい
京大の人気教授 瀧本 哲史さん
著者の瀧本さんは、東大法学部卒業、マッキンゼー入社、現在はエンジェル投資家として活躍しつつ、京大で起業論を教える人気教授です。多額の借金を抱えてしまった日本交通の立て直しもした、理論も実践も豊富な方です。
教鞭をとる京都大学。その授業の大半を占めたのは、ある時は医学部の学生でした。
京大医学部の学生が、将来に明確な不安を感じて、瀧本さんの起業論を受講している。若者に生き残る術を教え続ける方です。
本書で言われる“武器”とは、この時代の中で自分をいかに価値づけるかという能力と、考え方です。
高学歴でもコモディティー
瀧本さんは、かなりキレのあるテンポの良い文体が特徴です。(わかりやすく言うと、やや上から目線です。笑)
中でもこの見出し。“高学歴でもコモディティー”。
コモディティーとは、直訳で日用品という意味ですが、これを人材の観点で話しています。
ここでいうコモディティーとは、百均のペンのように、どこで買ってもだいたい同じ性能、同じ価格、特徴のないもののことです。つまり差別化がされていないもの。
TOEICの点数や、資格などもその例としてあげられています。つまり、ある条件を満たした就職の応募者は、もはやTOEICや資格などの面では同じで、優劣をつけられない人材なのです。
このように、学歴が高かったり、資格を持っていたりするけれど、他の人と代替可能な人は、人材市場で買い叩かれてしまう。
このような時代にいることを認識するべきと、辛辣に述べて下さっています。
6つの漁師の話
では、その中でいかに自らの価値を高めていけばいいのか?
6つの漁師の話がありました。簡単な説明は以下の通りです。
- とれた魚をほかの場所に運んで売ることができる漁師: 物理的に離れたところにものを持って行って、売ることができる漁師。(= トレーダー)
- 一人でたくさんの魚をとることができる漁師: 資格や学歴を持っている人。プロと呼ばれる人たち。(= エキスパート)
- 高く売れる魚を作り出すことができる漁師: 魚に付加価値をつけることが出来る人。 (= マーケター)
- 魚をとる新たな仕組みを作り出す漁師: 魚をとるための、新たなシステムを生み出すことが出来る人。(= イノベーター)
- 多くの漁師を配下に持つ漁師集団のリーダー: 多くの漁師をまとめ、導くことが出来る漁師。チームワークで稼ぐことが出来る。(= リーダー)
- 投資家的な漁師: 厳密にはこの者自身が漁師である必要はないが、少なくとも魚をとる市場について熟知をしており、市場の流れについて知っており、戦略を立てられる者。資金を持っており、また、そのビジネスの責任を負うことが出来る。(= 投資家)
これら、前者2つの漁師でなく、考え方とスキルを得て、後者の4つ種類の漁師になること。
4つのうちどれかになるというよりかは、4つの漁師を組み合わせて、世の中に価値を生み出す人材になってほしい。それが瀧本さんからのメッセージだと思います。
それが、これからの激動の流れを生きていくのに考えなければならないことだと言うのです。
英語、会計、ITは奴隷の学問
具体的に、より良い環境ではたらくために、まず身につければいいものは、何だと思いますか?
前述のようなことを言われても、やはり”英語、会計、IT”は、何か自分を高めようとする人が、一番に考えるものだと思います。
瀧本さんは、これらを”奴隷の学問”と言い切っています。
この学問を身につけることは、決して自分を自由にはしない。
例えば、英語が出来る人は、ただ英語が出来る人、として使われてしまう、などです。英語もただ学ぶのではなく、目的が大切ですね!
リベラルアーツの必要性

それでは、自由の学問とは何なのでしょうか?
瀧本さんは、リベラルアーツが必要だと言っています。リベラルとは自由のこと。
その学問の歴史は古く、大学で言うと、一般教養が近いです。ハーバード大学は、世界で最古のリベラルアーツをテーマにした大学です。
卒業生は、卒業生同士で、大学のあと自分がいかに、どのようなことをやってきたかを語り合う。妥協や、成長、貢献のない人は肩身の狭い思いをするそうです。
リベラルアーツを学ぶことで、目先の”雇われるための学問”ではなく、自分を価値付けしてゆく方向に持っていける。
これこそが、瀧本さんが本書で伝えたいメッセージなのではないでしょうか。
その分厚さとは予想に反して、具体例も豊富で、ホリエモンや2ちゃんねるのことなど、様々な時事問題なども取り上げられています。(後に出版されたエッセンシャル版では、時事問題はカットされているそうです。)
ぜひ、自分の未来を考えるにあたって、参考にしてみて下さい!
Amazon.co.jp
|