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21世紀を生き抜く3+1の力で、「21世紀型スキル」を学ぼう

約11分

2050年、あなたは何歳ですか?
あなたの子どもは、何歳でしょうか?
そのとき、世の中はどうなっているでしょうか?
そのときまでに、あなたは、何を成し遂げ、
どんな生き方をしていたいですか?

こんなメッセージで、この一冊は始まります。このようなことを、考えたことがあるでしょうか?

今、多方面で活躍されている佐々木裕子さんによる、「未来に左右される道」と「未来を切り開く道」どちらを選びたいかというメッセージ。
そして、21世紀を自分らしく、活きいきと生き抜くために必要な3+1の力とは?

佐々木裕子 – 著者紹介

佐々木裕子氏は、株式会社チェンジウェーブ代表の女性経営者です。東大法学部卒業後、日本銀行に入社。のちにマッキンゼーアンドカンパニーに入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナーに。

「変革屋」として8年強活躍後をした後、企業や個人の変革をサポートする会社を立ち上げるため、独立。現在は一児の母でもある。近年は世界的ベストセラーとなった”WORKSHIFT”著者のリンダ・グラットン教授と対談をしたり、託児サービスを都内で開始するなど、これからの世の中を生き抜くためにすべきこと、というメッセージを届け、支援すべく、多方面で活動している方です。

本の概要

21世紀。成功法も、前例もないのが今の時代。そんな時代を生き抜くために、どのような力を身につけたらいいのか?
マッキンゼー出身の著者が提唱する、”21世紀スキル”とは? 
・考える力、共創する力、進化する力 + もう1つの力について、豊富な経験を踏まえながらそれらのスキルを身につける必要性と実践法を説く。2050年から俯瞰的に、けれど最後には個人レベルに落とし込める。そんな、逆算をしてくれる一冊。

21世紀とはどういう時代なのか?2050年の世界

2050年の世界がどうなるのかについて、シンプルな質問について書かれています。
未来をイメージするには、まず未来について客観的な事実を知っておく必要があります。是非、これらの質問について考えてみて下さい。

例えば、このような質問です。

・2050年の世界人口は_________人(つまり、現人口の____倍)。もっとも人口成長の著しい地域は、______と______。
・2050年の日本の人口は、推定で_______万人。日本は_____よりも人口の少ない国になり、GDPは中国、インドの___分の一未満になる。
・2050年の日本の総人口の平均年齢は、____歳。人口の____割が65歳以上の国になる。

3つめの、「日本の総人口の平均年齢は、2050年には何歳になるのか?」・・・53.4歳です。

まさに、今20代の人が、25年後になる年齢に近い。
その時には、驚くことに、日本の人口の4割以上が65歳以上になっています。

本書の序盤では、2050年の世界について、数字を交えながらイメージさせてくれるパートです。普段流れているニュースや雑誌、新聞で得られる情報ではありますが、「なんとなく」流してしまうことでもあります。クイズ形式で、答えを考えながら、読んで見てください。

21世紀を生き抜く3+1の力

本書の本題です。21世紀を生き抜くためには、”これからの時代に求められる力は何なのか?”の20世紀との違いを知っておく必要があります
。テクノロジーや技術革新市場の変化を分析し続けているガートナー社は、2010年の「The Future of work」というレポートで、これからの時代の10の変化を予測しました。
主なポイントは以下の3つです。

①「考えて決める人」vs「実行する人」という役割分担が薄れ、一人ひとりが自分の頭で「考える」時代になる
②多様な「専門性」をもつ「個」が、「国家」や「企業」という枠組みを超えて機動的にコラボレーションする「共創」の時代になる
③やってみて、その反応を見て修正するプロセスを繰り返す、継続的な「進化」を前提とした時代になる

20世紀は、国や企業という枠組みの中で、決められたことを忠実に実行すれば、大多数の人は右肩上がりで成長出来る時代でした。

また、世の中もこの仕組みを前提として動いていました。20世紀は、言われたことをきちんと実行してくれる力や、誰かに敷かれたレールの上をひた走る力があればよかったわけです。

それに対する21世紀。国や企業に守ってもらうのではなく、自ら考えて行動出来る。周りと共創していける。そして、自分を進化させられる力が必要となってきます。

21世紀を生き抜く3+1の力

ハーバード・ビジネススクールも、「教室でのケーススタディに加え、学生が世界の国や地域にグループで出かけ、特定のテーマについて調べ体験しまとめる、という実体験型のプログラム」を必須コースとして導入し始めました。

学生に「その場にどっぷりと浸かり、経験に基づいてチームで学ぶ機会」を提供するのが目的。単なる知識ではなく、実践の経験を提供し、「自分が肌で感じることから学び、進化する知性」を育むのが狙いです。では、3つの力を見ていきましょう。

考える力: 自分で考える力

21世紀を生き抜く3+1の力 考える力

考える力の本質とは?

「考える力」というと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。

一般的には「ロジカルシンキング」「戦略思考」をイメージして、フレームワークで物事を整理する力をつけることだと思うのではないでしょうか。

実際、著者の佐々木裕子さんのもとにも、「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」の講座をやってほしい、という要望がよく来るそうです。
次世代の人材を育成するのにあたって必要な、考える力とは、なんなのでしょうか。

佐々木さんのマッキンゼー時代の元同僚に、登山家でもあり事業家でもある山田淳氏の話が紹介されていました。彼は、大学二年半でエベレスト、マッキンレー等世界七大陸最高峰を制覇。当時の世界最年少登頂記録を達成しました。マッキンゼーも三年半で退社し、今は登山人口の増加と安全登山の推進をミッションとした会社を起こしています。彼の目標は非常に具体的です。

・日本の山々に世界中の人々が登りたいと思ってやって来る世の中にする
・そのためには、日本人がもっと山に登るようになって、その魅力を実感するべき
・日本の国土の7割は山なので、日本の登山人口も7000万人にしたい。

この目標に対して、なぜ登山人口が少ないのか(現在は約1000万人)を徹底的に分析しました。

・山に登るきっかけがない
・山に登ろうと思うと、道具を揃えるだけで10万円くらいかかる

本質的なボトルネックはこの2つということが見えてきました。
そこで彼は、自社で日本初の山道具レンタル屋を始めるとともに、山のフリーペーパーを発行することに決めたそうです。

考える力の本質は、「なぜそれを目指すのか?それを実現した先にどんな世界を実現したいのか?」を考え抜いて、その上で、明確な答えを出すことです。変化を創り活かす人と、変化に呑まれてしまう人の最初の分岐点は、ここなのです。

考える力の3つの要素

目指すものを定義する力

命題設定をする力です。いつ実現したいのか、なぜなのか。
その世界観と根拠を、人に説得力をもって語れるまで考え抜く。

ズームイン・ズームアウトする力

目指すものが決まったら、それを実現する方法論を考える。そのためには、「本質」を見極める「ズームイン」できる力と、固定概念にとらわれず、新しい方法論を考える「ズームアウト」できる力の両方が必要です。

この力を鍛えるには、何度も考え何度も反芻する「思考体力」を鍛える以外に方法はありません。

数字や事実で考える力

目指すものと、実現する方法論を行ったり来たりして考えるときには、「本当にそうか?」を問い続ける。客観的な数字や事実で考える力が必要になります。

→ この3つの力を、ぐるぐる回すことが考えるプロセスです。
このプロセスを回すときに、自分がどれだけ先を見据え、どれだけの視野で「世界」をとらえているか。「想像力と世界観」を広げる力が、「考える力」の核になります。

想像力と世界観を広げるためには、今の自分のフィールドにいるだけではなく、”自分の周りの見えない境界線”の外に出て、新しい事実や数字に触れることを、定期的・意識的に行うことが大切です。たとえば以下のことが紹介されています。

・海外メディアの情報をチェックする
・興味ある大学の講義やイベント企画に参加してみる
・「会ってみたい」と思った人に(面識がなくても)会う
・違うジャンルのプロと組んで仕事をしてみる
・まったく違う世代や行ったことのない国の人と接点をもつ
・海外を旅する

共創する力: 人と共創する力

「多様な」人々との議論を通じて、その議論の中から学び、ベストな答えを導き出し、実践し始めることができるか?

「これまで考えたことのなかった新しい解決策を共に生み出していく力」が、共創する力です。共創する力は、これらの3つの力でつくられています。

場を創る力

必要な「場」の性質を理解して、適切なチーム・議論の環境を創る力です。

・その場の環境を、これからの問題解決にとって必要な形に整えること
・参加者全員が共有すべき目標、価値観、暗黙のルールを共有すること

この2つがキーになっています。例えば、通常業務の延長の場なのか?業務とはまったく別で、楽しんで自由に議論をするべき場なのか?それらによって、創られる場は変わってきます。

ベストな答えを共に紡ぎ出す力

本質的な問いからブレないようにし、多様なチームの知恵を引き出し、コンフリクトから逃げずに、その時点でベストな「答え」を紡ぎ出す力です。

よく大企業の会議だと、「議論のための議論」をして堂々巡りになることがあります。そうではなく、「その時点でのベストな答えを紡ぎ出すための議論」が必要だということです。

時間が限られていて、参加者も違った価値観・意見を持っている中で、ベストな答えを出すのは当然簡単なことではありません。

アポロ13号の事故はご存知でしょうか?月を目指して飛び立ったロケットが、月のほんの手前で故障…。
月の着地が目的ではなく、その瞬間に、ゴールは宇宙飛行士たちの地球への無事な生還に。3人の飛行士を生還させるために、時間が刻々と過ぎていきます・・・。

アポロ13号は映画にもなっており、飛行管制主任のリーダーシップが緊迫した状況の中で光っています。本書では、このような力を得ることを目指すことの大切さが語られています。

アイデアを形にして実行する力

具体的な「形」に落とし、やってみる力です。共創する力の最後の大きなハードルがここです。

議論を重ねつづけることよりも、実際にやってみて、うまくいくかどうかを見る方が、はるかに実践的で速い。こういうケースがどんどん増えてきています。

これらの3つの力を発揮するうえでの「核」となるのが、多様な人々の力を尊敬し、信じる力です。

進化する力: 自己進化する力

考え、共創するプロセスの中で、自分自身も何らかに気づき、「進化」することが出来るか?
それが進化する力です。

真剣勝負

真剣勝負をする、ということは、「自分をなるべくよく見せよう、賢くかっこよく見せよう」という考えを捨て去って、たとえ不恰好でも、泥まみれでも、「いまの自分」が「いまやるべきこと」に120%集中し、圧倒的なチャレンジと努力をすることです。

佐々木さん自身の、3週間のミニMBAでの出来事が書かれていました。参加者40人中日本人はたったの1人。しかも他の参加者は大半はアメリカ人で、みんなイェールやハーバードなどの名門卒。

ネイティヴではない人たちも、オックスフォード卒であったりと、”留学経験もなくて…”という佐々木さんとは一線を画すメンバーでした。
議論に全くついていけず、英語もままならずに自己嫌悪に陥っていた佐々木さんは、メンバーの一言で勇気付けられます。英語を諦め、議論を諦め、ただ無難に研修をこなすのではなく、出来るだけ、その場で出来ることを体当たりで臨みました。

結果は最低レベルの「D」と辛辣な評価でしたが、これをきっかけに、言い訳をせず、体当たりで臨むことの大切さを実感されたそうです。

自己認知

多くの人材育成に関わっていくなかで、「自分の育成は、自分にしかできない」というのが、佐々木さんの感じるところだそうです。

自分のことを省みることができなければ、人の成長の角度はとても鈍くなってしまう。自己認知力の違いが、鍵なのです。

自己修正

たとえ厳しいものであっても、自分に客観的なフィードバックをくれる人々を何よりも大切にし、むしろ自らそれを積極的に求めていく。

このような姿勢が自己修正の力です。これらの力の核にあるものが、”目指すものに対する純粋な情熱”です。

まとめ

・21世紀は、決められたレールを忠実に走る人ではなく、自ら考えて、まわりと協力をして、自分自身を進化させられる人材になる必要がある。
・考える力: 「なぜそれを目指すのか?それを実現した先にどんな世界を実現したいのか?」を考え抜いて、その上で、明確な答えを出すこと。
・共創する力: これまで考えたことのなかった新しい解決策を共に生み出していく力。
・進化する力: 考え、共創するプロセスの中で、自分自身も何らかに気づき、自分を高める力。

3+1の、最後の1つはぜひ、実際に手にとって確認してみて下さい。

佐々木裕子さんの、マッキンゼーで培った理論と実践のバランスの良いメッセージ、そしてその根底にある温かいマインドが感じられる一冊です!

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